朦朧日記

眇めに語る些事の重箱

おばちゃんだって乙女

雨あがりのお楽しみ。 こういうのをポケットにでも入れておけたらと思う。

実はうきうきしている

雨音がやんだ。 鳥が鳴きかわしている。 ほの暗い台所で聞いている。 時折、表を車が通る。 しぶきを巻きながら回転している車輪の音がする。 再び雨音が聞こえてくるまで、じっとしていたい。

猫にはわからない

日あたりの加減を気にしないような蔓草でも まったく日陰ではあんまりなので、ひっそりと日光浴ついでに記念写真。 我が家には、長いものやぺらぺらしたものを見ると 齧らずには居れない猫がいる。 普段はものに紛らせて、猫の目から秘匿している。

たまらん

何か言おうと思ったけど、 やめた。

ふつうの日

じっとしてると少しだけ寒いような気がする日 薄暗くなって、いつの間にか無聊がしみてくるようで、 小さくまじないをかけて、遠いい気持になる。 とおい、ではなく、とおいい。 日が暮れたら、坦々と食卓の時間。

顔なじみゆえ?

煙草を買うために3、4日おきくらいの間隔でコンビニに 行っている。 行く時間帯はだいたい同じなので、一度に2箱づつ買っていたら、 銘柄を言い終わらないうちに、二つ出してくれる。 このところ、ドーナッツも併せて買っていたら、二つだしてくれてしま…

ダブルロール

そうめんの木箱なんかにペンキをぬって盆代わりにつかったり、 たまに、かたい紙箱にも塗って模様をつけたりするのに、 おもに絵筆と工作用の刷毛を使っている。 だいぶいかれてきたが、ざらざらした刷毛目が残るのはきらいじゃないので しつこく使いつづけ…

わけあり緑

我が家は山の斜面にしがみつくように建っている。 日中だいたいは薄暗い家なのだが 窓外の眺めは空中に浮かんでいるように錯覚できる。 道向こうは竹薮と樫や樟なんかの常緑の樹木が 入り混じって茂っている斜面の続きなので 春になると新芽が生えつつ、落葉…

本日のラッキー

夜ふかしして小腹がへって、 かぼちゃを蒸かしてつぶして牛乳でのばしてスープを作った。 ぶどうパンにバターをのせて一緒に食べたいが、ないのでがまん。 取りわけ匙で「でっかいひとくち」をやってみる。 熱いので、意気ごんだ割にいつもの「ひとくち」だ…

くんくん、どきどき

若いころ住んでた家の近所に美大があったので、 ごみ捨て場から樟の木っ端を拾ってきて、ちいさく切り分けて使った。 とくに目的はないが手の形を削り出してみたら、意外に首尾よくできたので 次もうまく行くかな、その次はどうかな、と試すようにいくつも作…

うらしまカップ

びっくりするほど冷めるの早いわよ、そう言われたが、貰った。 コーヒーを飲んでみて、確かに早かった。 甘酒ならばもったりと熱がこもるゆえ、 どちらかといえば猫舌にとっては 適温が早くやってくるのは、かえって喜ばしい。 レンズに蓋をして 「さて、ひ…

密命バレンタインデイ

友人から小包が届いた。 指令書とともに「飴ちゃん」が同封されていた。 指令の詳細は機密にかかわるので省略。 これは遂行報告書に添付した画像である。

あのときはごめんね

昔々、星の観察というポピュラーな宿題を子が渋るので 一緒に夜空を見てみたら、星座早見表の図と同じに結べなかった。 わたくしが育ったのは貧弱な夜空の土地だったせいか 星の数が多すぎて迷った。 子が一心に、図と実際を対応させようと 懐中電灯を手に冷…

座敷のアントワネット

「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」の 「お菓子」にあたるパンが焦げたのである。 昼なのである。 夕餉にはまだ間が遠いのである。 炊きたてご飯は家族で食卓を囲むときが、いいのである。 焦げたパンは固いのである。 顎の丈夫なドイツ人の…

大人の火遊び

ガラス棒をガストーチで焙って 何か作ることを覚えたてのころ 緊張と愉快を行きつ戻りつしながら、作った。 慌てたりうろたえたり、せわしい思いをした。 堡塁は紙粘土を使った。 くりぬいた窓には和紙を貼った。 五ワットの電球を仕込んだ。 おもちゃみたい…

無理は承知

花野菜を茹でて、ひらめいた。 枯山水。 なんちゃって、などとシャッター切っていると ご飯まだ、と、子が起きてきた。 朝餉のしたくが、うっちゃりだった。 今日は月曜日。

男前かもしれない

体験陶芸で作った。 陶土を麺棒でのして六枚の板にしておいて 水で溶いた陶土で貼り合わせて作るのだが 切り方がぞんざいなのと、迂闊にいじるのとで 出来上がりはいびつだ。 いびつなりに立ちあがったところが つくだ煮などの食品を守り且つ、 その他の保存…

なんだか違う

出歩くよりも家の中にいるのを好むが それでもたまに、その辺をぶらぶらしてくることがある。 少し歩くと別荘地に出る。 何年も人の気配のない小ぢんまりした平屋や 生い茂っては枯れる、をのんびり繰り返しているような空き地を回ったり 陽の射さない裏道を…

掘り出しもの

別々の知人からもらった。 どちらも、我が家を訪ねがてら たまたま立ち寄った、とある河原の草地になった土手に うずもれているのに気がついて 何となくほじくり出してみたものだそうだ。 こういうの好きでしょう、と、ほじくりたてをくれた。

誰に話しかけてるの?

何か作っていると喋りたくなるので 、ノートに書きつける。 思いついたことをつらつら書けば気が済む。 子が小学生だったとき、部屋でゲームをしていて、しきりに語りかけてくる。 適当に相槌を打ったり、手作業の合間に画面を覗いて いまのは何、などと尋ね…

我々には見えない

雨が降ると窓枠の隙間から漏る。 滴る真下に備えを据えておく。 滴る位置が、ずれることがある。 備えの下にも拭き取るための備えをしておく。 ふだん、これらの備えは我が家の者の目には映っていない。 備えたことは忘れられている。 たまった雨水も干上が…

猫との攻防

猫が花瓶の水をおもしろがって飲むので困る。 座卓に一輪挿しなど飾っていると必ず倒して飲む。 花によっては葉っぱを齧り散らして澄ましている。 夜、皆が眠っているときに、やらかすので 猫の入れない部屋に移してから、寝室に引き上げる。 この葉っぱは、…

玉手箱

硬い空き箱はとっておく。 あてどない 細かいものをしまう楽しみがある。 蓋のついた四角いものは、からっぽでも何か入っていても 開ける時とかぶせる時、ほんの少し嬉しい気分が漂う。 薄い木の板を切り貼りして箱を組むのも楽しい。 どんな物の寄る辺にな…

たやすく崩れる

父の郷里は海のそばに崖がある。 その崖の地層がこんな具合に見えていた。 崖のふもとに小さな校舎が立っていて、父はそこに通っていた。 崖の上に狐の嫁入りが通ったのを 少年だった父は見たことがあるという。 小さな校舎に通う子供はいなくなったが 崖が…

チャームポイント

物心ついたときには、すでに我が家にあった鍋。 新品の頃は輝くような初々しい姿をしていたかもしれないが、知らない。 今も現役で活躍中。 被熱や摩擦で受けた経年を物語る、この質感が好きだ。 わたくし自身の眉間の皺や法令線を親しみをもって 眺められる…

昼間の夜

曇り空が好きだ。 太陽が銀色になるから。

昨日の昨日の昨日

洗い物をしてるとき、ある日ある時目にした風景を 頭の中のどこかに映し出していて 蛇口を捻り「昨日も洗い物をしてるとき、この景色を考えていた」と 思う。 次の日も洗い物をしてるときに同じ景色のことを考えている。 「昨日の昨日も考えていた」と気がつ…

気分でる場所

子が幼かったうちはやめていた。 換気扇の回転音を下地に、煙草の先が焦げて ちりちりいう音を聞いて、くつろぐ。 家の外では喫煙者は肩身が狭い。 コーヒー&シガレッツを のんびり味わえる定位置になった。

常夜灯じゃないけどさ

昔々、わたくしの子が宇宙の塵ですらなかったころ テレビ番組で、硯職人は鑿を逆手にもって 肩に当て石を削る、ということを知った。 硬い石を割らぬように、刃物を傷めぬように、そのように削る。 ほう、と思った。 美術大学生だった友人が、木目が素敵な常…

こちょこちょ

バザー、という野暮ったい響きが好きだ。 昔々、わたくしの子がまだ幼かったころ 幼稚園のバザーに供出したロウソク。 ロウが冷えると芯のまわりが窪むので 後から注ぎ足したところが 、まるく溜まった。 かさぶたみたいに「剥がしたい」を くすぐられたが、…