朦朧日記

眇めに語る些事の重箱

2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

誰に話しかけてるの?

何か作っていると喋りたくなるので 、ノートに書きつける。 思いついたことをつらつら書けば気が済む。 子が小学生だったとき、部屋でゲームをしていて、しきりに語りかけてくる。 適当に相槌を打ったり、手作業の合間に画面を覗いて いまのは何、などと尋ね…

我々には見えない

雨が降ると窓枠の隙間から漏る。 滴る真下に備えを据えておく。 滴る位置が、ずれることがある。 備えの下にも拭き取るための備えをしておく。 ふだん、これらの備えは我が家の者の目には映っていない。 備えたことは忘れられている。 たまった雨水も干上が…

猫との攻防

猫が花瓶の水をおもしろがって飲むので困る。 座卓に一輪挿しなど飾っていると必ず倒して飲む。 花によっては葉っぱを齧り散らして澄ましている。 夜、皆が眠っているときに、やらかすので 猫の入れない部屋に移してから、寝室に引き上げる。 この葉っぱは、…

玉手箱

硬い空き箱はとっておく。 あてどない 細かいものをしまう楽しみがある。 蓋のついた四角いものは、からっぽでも何か入っていても 開ける時とかぶせる時、ほんの少し嬉しい気分が漂う。 薄い木の板を切り貼りして箱を組むのも楽しい。 どんな物の寄る辺にな…

たやすく崩れる

父の郷里は海のそばに崖がある。 その崖の地層がこんな具合に見えていた。 崖のふもとに小さな校舎が立っていて、父はそこに通っていた。 崖の上に狐の嫁入りが通ったのを 少年だった父は見たことがあるという。 小さな校舎に通う子供はいなくなったが 崖が…

チャームポイント

物心ついたときには、すでに我が家にあった鍋。 新品の頃は輝くような初々しい姿をしていたかもしれないが、知らない。 今も現役で活躍中。 被熱や摩擦で受けた経年を物語る、この質感が好きだ。 わたくし自身の眉間の皺や法令線を親しみをもって 眺められる…

昼間の夜

曇り空が好きだ。 太陽が銀色になるから。

昨日の昨日の昨日

洗い物をしてるとき、ある日ある時目にした風景を 頭の中のどこかに映し出していて 蛇口を捻り「昨日も洗い物をしてるとき、この景色を考えていた」と 思う。 次の日も洗い物をしてるときに同じ景色のことを考えている。 「昨日の昨日も考えていた」と気がつ…

気分でる場所

子が幼かったうちはやめていた。 換気扇の回転音を下地に、煙草の先が焦げて ちりちりいう音を聞いて、くつろぐ。 家の外では喫煙者は肩身が狭い。 コーヒー&シガレッツを のんびり味わえる定位置になった。

常夜灯じゃないけどさ

昔々、わたくしの子が宇宙の塵ですらなかったころ テレビ番組で、硯職人は鑿を逆手にもって 肩に当て石を削る、ということを知った。 硬い石を割らぬように、刃物を傷めぬように、そのように削る。 ほう、と思った。 美術大学生だった友人が、木目が素敵な常…

こちょこちょ

バザー、という野暮ったい響きが好きだ。 昔々、わたくしの子がまだ幼かったころ 幼稚園のバザーに供出したロウソク。 ロウが冷えると芯のまわりが窪むので 後から注ぎ足したところが 、まるく溜まった。 かさぶたみたいに「剥がしたい」を くすぐられたが、…

みそべらは招く

母の小宇宙、台所。 機能的でも洗練されてもいない。 うっかり繊細な一面を見せながら おおむね鷹揚で、いささか野放図な秩序を持つ。 時に微妙な均衡で、厨としての機構を 維持し存在する。 あ、木蓋、落っこちそう。 傍らには白い扉の冷ややかな パンドラ…

片隅に瓶詰

コルク栓を詰めているのは 知らない間に瓶底に埃がたまるのが嫌だから。 座布団のようなものを どうしても敷いてしまうのは 昭和の女の習性だから。

世界が俺様

デジタルカメラを初めて使ったとき 絞りやシャッタースピードなんかを変えると 写りかたが変わるのが面白くて、素朴に感動した。 レンズに虫眼鏡を当てると、ぐいっと近寄れて 画面のまわりがぼやけて流れるのに魅了された。 ふだん台所で使っているガラスボ…

ありしひの

すこやかなりしすゐぎんとう ともれるさまのわれはしらぬを

水銀灯の放心

悟りの境地ってこんな感じかもしれない。 以前、田中泯がどこかの河原で舞踏している映像を見たことがあった。 漬け物の重しのような角のとれた石を胸の上にのせて横たわっている。 その石に心臓の鼓動が伝わり、波打つように動いていた。

泳いでいかない

巨体の二頭をしばらく見ていた。 眩んできたので家に入った。 長いこと、よそ見してても まだ、いた。 絞った股引きを竿にかけたり 湿った長袖を全部並べて てんでに揺れる隙間を直したり 油断してても、いた。 身体が冷えた。 あとから投網が投げられた。 …

わたくしの素敵な

お父様から万年筆を賜った。 家にいると、ほぼへべれけで家族に絡むので 普段は心のごく浅いところでクソ親父と思っているが 質問したことに鮮やかに答えてくれたり さらりと文房具をくれることがある。 そういう時はお父様になる。 昔、お父様の誕生日にこ…

とっておきの

箪笥の飾り金具。 真鍮の薄板を刳りぬいてある。 栞として使えなくもない。 このチューブの口は浜辺のお土産。 なんだか乳首みたい。 かたく巻かれた落とし文の内側に 何が入っているか知っているから ほどいたことはない。 すぐに好奇心を満たしてしまう子…

下を向いて歩く

遺跡が発掘調査された後、畑になったその畝の表面に こんな石の剥片が混ざっていて拾い集めた。 石器時代とか縄文時代とかそんな大昔の人が残した手わざの跡だ。 並べてみると静かなリズム。 道端でこんな感じのかけらを拾うことがある。 自動車の部品じゃな…

人間の眼じゃない

花びらって透けるんだねえ。 カメラの眼にはこんなふうに映ることもできる。 この薔薇は3週間くらい生きてた。 葉っぱは猫にかじられた。

ひかり

明け方まで起きてたついでに初日の出。 竹薮ごしの空が橙色に染まりはじめた。 カメラの焦点を合わすと肉眼で見ている色味が消えてしまうので ぼうっとしたまま記念撮影。 蜜柑色からこがね色に世界が照らされていく。 光が斑にかさなって、キボーってこんな…