密命バレンタインデイ
友人から小包が届いた。
指令書とともに「飴ちゃん」が同封されていた。
指令の詳細は機密にかかわるので省略。
これは遂行報告書に添付した画像である。
あのときはごめんね
昔々、星の観察というポピュラーな宿題を子が渋るので
一緒に夜空を見てみたら、星座早見表の図と同じに結べなかった。
わたくしが育ったのは貧弱な夜空の土地だったせいか
星の数が多すぎて迷った。
子が一心に、図と実際を対応させようと
懐中電灯を手に冷たい地べたに座り込んで下を向いているあいだ
わたくしは2回も流れ星を見た。
座敷のアントワネット
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」の
「お菓子」にあたるパンが焦げたのである。
昼なのである。
夕餉にはまだ間が遠いのである。
炊きたてご飯は家族で食卓を囲むときが、いいのである。
焦げたパンは固いのである。
顎の丈夫なドイツ人の霊でも降ろして、かじりたいのである。
日本のパッとしない土地のはずれに、
ドイツの幽霊がさまよっているわけないのである。
写真なんか撮っていて冷めた焦げパンはさらに固いのである。
大人の火遊び
ガラス棒をガストーチで焙って 何か作ることを覚えたてのころ
緊張と愉快を行きつ戻りつしながら、作った。
慌てたりうろたえたり、せわしい思いをした。
堡塁は紙粘土を使った。
くりぬいた窓には和紙を貼った。
五ワットの電球を仕込んだ。
おもちゃみたいだが、意外に丈夫だ。
二十年以上、夜の標を務めている。
火遊びは火遊びのまま、好奇心をちょろりと焙っただけ
斑点のついたガラス玉を作るくらいで
技への探求心には点火しなかった。
男前かもしれない
体験陶芸で作った。
陶土を麺棒でのして六枚の板にしておいて
水で溶いた陶土で貼り合わせて作るのだが
切り方がぞんざいなのと、迂闊にいじるのとで
出来上がりはいびつだ。
いびつなりに立ちあがったところが
つくだ煮などの食品を守り且つ、
その他の保存物を頭上に頂き、環境に耐久すべく
冷蔵庫という秘境においての使命を決意した風情で愛しい。