朦朧日記

眇めに語る些事の重箱

あのときはごめんね

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 昔々、星の観察というポピュラーな宿題を子が渋るので

一緒に夜空を見てみたら、星座早見表の図と同じに結べなかった。

わたくしが育ったのは貧弱な夜空の土地だったせいか

星の数が多すぎて迷った。

子が一心に、図と実際を対応させようと

懐中電灯を手に冷たい地べたに座り込んで下を向いているあいだ

わたくしは2回も流れ星を見た。

 

 

座敷のアントワネット

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「パンがなければお菓子を食べればいいじゃないの」の

「お菓子」にあたるパンが焦げたのである。

昼なのである。

夕餉にはまだ間が遠いのである。

炊きたてご飯は家族で食卓を囲むときが、いいのである。

焦げたパンは固いのである。

顎の丈夫なドイツ人の霊でも降ろして、かじりたいのである。

日本のパッとしない土地のはずれに、

ドイツの幽霊がさまよっているわけないのである。

写真なんか撮っていて冷めた焦げパンはさらに固いのである。

大人の火遊び

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ガラス棒をガストーチで焙って 何か作ることを覚えたてのころ

緊張と愉快を行きつ戻りつしながら、作った。

慌てたりうろたえたり、せわしい思いをした。

  

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堡塁は紙粘土を使った。

くりぬいた窓には和紙を貼った。

五ワットの電球を仕込んだ。

おもちゃみたいだが、意外に丈夫だ。

 二十年以上、夜の標を務めている。

火遊びは火遊びのまま、好奇心をちょろりと焙っただけ

斑点のついたガラス玉を作るくらいで

技への探求心には点火しなかった。

 

男前かもしれない

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体験陶芸で作った。

陶土を麺棒でのして六枚の板にしておいて

水で溶いた陶土で貼り合わせて作るのだが

切り方がぞんざいなのと、迂闊にいじるのとで

出来上がりはいびつだ。

いびつなりに立ちあがったところが

つくだ煮などの食品を守り且つ、

その他の保存物を頭上に頂き、環境に耐久すべく

冷蔵庫という秘境においての使命を決意した風情で愛しい。

 

 

 

 

なんだか違う

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 出歩くよりも家の中にいるのを好むが

それでもたまに、その辺をぶらぶらしてくることがある。

少し歩くと別荘地に出る。

何年も人の気配のない小ぢんまりした平屋や

生い茂っては枯れる、をのんびり繰り返しているような空き地を回ったり

陽の射さない裏道を通り抜けたりして、帰ってくる。

玄関の扉を開けて、誰もいない部屋を見たら

よその家みたいに見えたことがあって

自宅で猫町体験をした。