朦朧日記

眇めに語る些事の重箱

秘密が行方不明

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 昔々、わたくしの子は無口な子供であったが、たまに喋った。

両のげんこつを合わせてから花が開くように指を広げ、

腕ごとこちらに向け突き出して、得意げに

「じじぼ」と言って、ひゃらひゃら笑いながら、あっち行ってしまった。

「じじぼって、何?」聞いてみたが

「ないしょー」くねくね身をよじり要領を得ない。

後年、こんなことあったね話の中で、あれは何だったのか聞いてみた。

ひげ生えたお兄さんになってしまった今は何も覚えてなかった。

無口なあの子は新陳代謝の向こう側に行ってしまった。