2020-07-07 秘密が行方不明 昔々、わたくしの子は無口な子供であったが、たまに喋った。 両のげんこつを合わせてから花が開くように指を広げ、 腕ごとこちらに向け突き出して、得意げに 「じじぼ」と言って、ひゃらひゃら笑いながら、あっち行ってしまった。 「じじぼって、何?」聞いてみたが 「ないしょー」くねくね身をよじり要領を得ない。 後年、こんなことあったね話の中で、あれは何だったのか聞いてみた。 ひげ生えたお兄さんになってしまった今は何も覚えてなかった。 無口なあの子は新陳代謝の向こう側に行ってしまった。