好きなかたちは身近に置いて眺めたい。
買ったり拾ったり貰ったり、
その時々の感慨や派生する記憶をたぐっては放す。
わたくしの母も、こけしや細かな人形や旅の思い出を
細い木枠で囲いガラスをはめたケースに、ぎっしり飾っている。
ひとつひとつは懐かしく、わたくしが幼い頃に感じた慕わしさを呼び起こすが
全体的には犇めく塊として箪笥の上に君臨している。
時折、わたくし自身のお飾りの一群が祭壇のようにみえる。
自分のぬけがらというか、すでに遺品のように思える。
生々しい欲求の痕跡のような気がして、
かえって「今この時」が身を流れて過ぎていく水圧のようなものを思う。