夢のようだわ
とかなんとか言いながら目が覚めた。
花咲く崖から駆け出すようにとびだして
シャツの裾から風を入れて落下傘を操るように
野原に着地したのだ。
雑に新鮮
草花の鉢を買ってきては枯らすのが習いな母が、
活けておいたのをその場でちぎって食卓へ供するというのに
漠然と憧れたらしい。
二週間ほど前、鶏肉をソテーしたのに乗っかってたのが初舞台で
以来、盤上に出番はまだない。
なじみのない食材なので扱いにとまどっている。
そもそもわたくしとて料理に関して
新境地を拓きたいという意欲に乏しい。
かたや舞台裏のあれこれを他所に
息災に身を広げていて、なんだかめでたい。
ちょっぴり寂しい
ナッツや干しぶどうが入ったチョコレートのほうが好きなのだが
これしか、うちになかった。
買いに出るのも億劫な日曜日のゆうがた。
西日タイム
地域の文化祭的な催事に参加した。
こつこつ作りためた小さな装身具を展示した。
会場は公民館の一室を借りた。
赤頭巾のお婆さんちみたいなファンタジックな建物だが
ここは会議室なのだそうだ。
天井には実務的な白色蛍光灯が下がっていた。
母屋とふたつの離れからなる施設は、中庭を囲み東に背を向けている。
会議のための照明をつけると、空間が残念な感じにちぢこまって見えた。
昼を過ぎて小一時間ほど西日が射しこむ。
こんな時に訪問者がいないのは、また別の残念だったが
西日タイムをたんのうしてから、電気をつけた。
猫の事情
気温は高くはないが蒸す室内の熱のこもりそうな場所で
まるくなってるところを写真に撮っていたら、
おととい起きた個人的な事柄について
印象の淡い濃淡を思い出しかけたけどすぐ放した、みたいに見えた。
猫はだいたい、まじめ顔していて考えていることがよくわからない。
ななとい茶房
住んでいる地域がこの世のすべてのような日常を送っているので、
どこか、幽趣ただよう喫茶店にでもふらりと立ち寄り
変わった気分にひたりたいものだと、頻繁に思う。
「思うだけ」の頻度はさて置き
隣町に行くにしろ、バスと電車を乗り継がねばならない。
入念な準備体操をしたのちに気合をこめて入水してゆく
寒中水泳のような士気を鼓舞しなくてはならない。
その隣町だってここと同じくぼんやりと寂れている。
噂で聞いた玄妙な茶房に思いを馳せつつ、
コンビニエンスなお茶菓子を
我が家では「いなせ」で通っている面子でしつらえてみる。
噂のお菓子の味は推して知るべくも、
推したところで手ごたえのない域である。
とはいえ、ふつうにおいしい。
溺れる桃
昔々幼かった子を水泳教室に通わせていたっけ
と、ふと思い出した。
六年ほど毎週いやがらず通ったが、あんまり上達しなかった。