ななとい茶房
住んでいる地域がこの世のすべてのような日常を送っているので、
どこか、幽趣ただよう喫茶店にでもふらりと立ち寄り
変わった気分にひたりたいものだと、頻繁に思う。
「思うだけ」の頻度はさて置き
隣町に行くにしろ、バスと電車を乗り継がねばならない。
入念な準備体操をしたのちに気合をこめて入水してゆく
寒中水泳のような士気を鼓舞しなくてはならない。
その隣町だってここと同じくぼんやりと寂れている。
噂で聞いた玄妙な茶房に思いを馳せつつ、
コンビニエンスなお茶菓子を
我が家では「いなせ」で通っている面子でしつらえてみる。
噂のお菓子の味は推して知るべくも、
推したところで手ごたえのない域である。
とはいえ、ふつうにおいしい。